葉 緑 素


葉緑素とは、どんなものか?

この地球上において、最もエクセレントな化学工業を営んでいるのが緑の葉で、そこでは極めて単純な物質から極めて複雑な有機化学物が生合成されています。

 

この光合成において、水は水素と酸素とに分解され、その分解された水素は、炭酸ガスを還元して炭水化物を作ります。葉緑体には、低温状態において炭酸ガス分子の安全性をおびやかすような、いいかえればこの分子を活性化するような独自のしくみ仕掛けられていると考えられます。光合成において、炭酸ガスを還元せしめるものは水素ですが、この過程の触媒を営んでいるものこそ葉緑素なのです。

 

1928年ウィルシュテッターによって、はじめて葉緑素は純粋に分解されました。彼はその化学構造が、ボディールの予言どおり、血球素のヘミンそっくりであることを証明しました(ウィルシュテッターは、この業績によってノーベル賞を授けられました。)また葉緑素に関する基礎医学及び臨床面は1920〜30年代にビュルギー一派により確立しそれ以後はアメリカに引き継がれて、大規模な臨床実験がフィラデルフィアのテンプル大学で試みられるようになりました。

 

ここで、ビュルギー一派によって得られた葉緑素の薬理作用に関する知見を要約すると、葉緑素は、すべて組織と臓器に対し刺激的、そして賦活的に作用します。たとえば、神経・筋肉の標本では、刺激伝導性が著しく昂進し、疲労の結果動かなくなった神経や筋肉も、これを与えると再び収縮をはじめます。心臓に対しては、収縮が強くなり弛緩期が長くなります。つまり、心房から心室への刺激の伝道時間が遅延するので心拍は緩徐となりますが、この収縮力は確実に増加する為、心臓ポンプ全体の働きとしては確実に昂進するのです。

 

しかし、この心臓のポンプ作用の強盛よりも、抹消血管の拡張作用の方がより顕著である為血圧は低下する傾向が見られます。また腸の蠕(ぜん)動を助け、便秘を除去します。呼吸数や呼吸量も増加せしめ、モルヒネによる呼吸マヒを回復させます。子宮に対して緊張をたかめ、しばしば収縮力を強めます。新陳代謝は一般に昂進しますが、窒素代謝はとくに活発となり、基礎代謝も高められます。そして造血臓器に対しては、鉄とまったく同様に刺激的に作用し、顕著な造血作用をあらわします。

 

 

以上の薬理学的な研究に引き続いて、葉緑素の臨床的応用もなされました。外科的応用が考えられ組織賦活作用を創傷治癒に役立てようと、1935年、組織培養によって、その賦活作用が実験的に証明されました。これからの研究や実験は、主としてスイスのベルン大学で行われました。以後テンプル大学で大規模な臨床実験が行われ外科的応用分野は、これによってほぼ確定したものといって良いでしょう。

 

 

われわれの日常生活において、最も頻繁に症状として表れるのが消化器系の疾患ですが、これらに対しても葉緑素はよい結果を導きます。たとえば、胃潰瘍、胃酸過多、慢性胃炎、胃下垂、およびアトニーなどの疾患にたいしても好成績が得られています。そして、この葉緑素は、できてしまった胃潰瘍や十二指腸潰瘍を治すばかりでなく、その予防、いいかえれば潰瘍の出現を阻止するという働きも持っているのです。このように、葉緑素はわれわれの生体に対して、いろいろな影響を与えます。

 

 

その薬理作用、生理作用は極めて広範多岐にわたっていますが、その効果をここで箇条書きにすると次のようになります。

 

1.細胞賦活作用        諸臓器機能昂進、組織抵抗力増強の各作用。

 

2.創傷治癒促進作用      肉芽形成促進、創面乾燥(分泌抑制)及び脱臭の各作用。

 

3.造血作用          造血素材となる。

 

4.新陳代謝促進作用      特に窒素代謝昂進、エブエドリン類作用

 

5.強心、末梢血管拡張作用   ヂギタリス様強化作用。末梢血管拡張による血圧降下作用。

 

6.殺菌・制菌作用       細胞賦活を背景とした制菌作用

 

7.抗アレルギー作用

 

 葉緑素は一般的に緑黄色野菜に含まれていますが、細胞膜に包まれているので摂取しにくい為、吸収を高めたものの方が最適と思われます。